舞台・演劇

2014/03/01

歌舞伎界は大丈夫なのか?!

松竹歌舞伎会から毎月「ほうおう」という会報が送られてくる。ほとんど毎月のように観に行った時期もあったのだが、近年とんと歌舞伎座にはご無沙汰してしまっていて、恥ずかしながらいまだ新歌舞伎座で芝居を観ていないのだが、ささやかな会費でも歌舞伎界の下支えの足しになればと思って続けている。

で、今日4月号が届き、巻頭は中村時蔵丈のインタビュー。「またお運びいただけるよう、いい舞台を」…云々。

ちょっと待て、と思ったのは、2013年3月27日に銀座で行われた新歌舞伎座開場を記念してのお練りの件。冷たい雨の中ファンを待たせて、30分近く遅れてようやくのスタートとなったのは、雨の中練り歩くのを嫌ってとある大御所がゴネて、バスから降りてこなかったからだという。

雨の中ファンを待たせて、自分は濡れることを嫌ってだだをこね続けたその人こそ、中村時蔵丈である(歌舞伎 お練り バス、とでも検索してみてください)。

富十郎、芝翫、勘三郎、團十郎、と新歌舞伎座の杮落しを心待ちにしていた名役者を次々と失い、歌舞伎界存続の危機といってもいい事態であったにもかかわらず、雨中足を運んだファンを大切にしない危機感のなさ。第一時蔵は歌舞伎界を背負って立つほどの女形でなかろうに。

それが一年後にしれっと冒頭の発言である。

ほんとうに、歌舞伎界と松竹に危機感がない。

(ちなみに私は澤村宗十郎丈の古風で典雅な女形が好きでした。急に亡くなってしまったのは惜しい限りでしたが。)

2012/12/05

勘三郎さん逝去

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思いがけない、朝のニュースだった。

先人の精神を守りつつ、現代人をわくわくさせるような歌舞伎を追求し、何の役でも「勘九郎(または勘三郎)の○○を観た…!」と思わせてくれる人だったと思う。歌舞伎座での「浪花鑑」、中村座での「千本桜(渡海屋)」、コクーンでの「四谷怪談」等々、ぞくぞくする思いで見終わった芝居は多い。

サービス精神旺盛な人で、どんなシリアスな芝居でも、どこかに一箇所は、くすっ、と笑わせるような要素を織り込んでいたけれど、それは決して悪ふざけやその場限りのウケ狙いではなく、そのおかしみの中にどうしようもないような人間存在の哀しみを表現していた、と私は思う。

勘三郎丈なかりせば、私はもう歌舞伎を観なくなってしまうのではないか、そんな落胆すら覚える。それは彼の意思と反するものに違いないけれど。

勘三郎さん、私に歌舞伎の面白さを教えて下さってありがとう。

心から、ご冥福を、お祈りいたします。

2012/10/21

東京交響楽団演奏会

ベートーヴェンチクルス最終回、井上道義指揮、ピアノ田部京子@佐倉市民音楽ホール。

劇音楽「エグモント」序曲、交響曲8番、ピアノ協奏曲5番「皇帝」。

音響は悪くないがなにぶん狭いホール。ホルンが反響板に近すぎてうるさい。弦は統一感有り、菅(特にクラ、フルート)がいまいち。オープナーのエグモントでピッコロの立ち上がり遅くていらいらする。唯一ファゴットの女性が表情豊かで素晴らしい演奏。

8番はなかなか軽やかで若々しい演奏。1番の次に好きかも。

ピアニスト田部京子さん、繊細な弱奏と強奏のバランスが良い。華のある音楽家だ。でもやっぱりホルンがうるさかった台無し。

弦はまずまずのオーケストラでした。

2008/12/07

諏訪内晶子のメンデルスゾーン

富士通コンサートシリーズ フィルハーモニア管弦楽団、12/7(日)、東京芸術劇場。

曲目はブラームスの大学祝典序曲、交響曲第一番、ソリストに諏訪内晶子を迎えてメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。

このオケは繊細なアンサンブルを作るので好きだ。でもこの日のブラ1は(特に金管群の)バランスが悪く、私にはホルンがうるさく、また音色がめりめりと割れて汚く感じられた。2楽章ヴァイオリンソロとの掛け合いでは自己主張が強すぎるように感じられたし、4楽章トロンボーンとコントラファゴットのコラールが繊細すぎるほど繊細だった(ちょっと物足りなかったけどトロンボーンの音色としては極上だったと思う)ので、続くホルンの旋律がやや荒れてきこえた。あさってのプログラムのチャイコフスキー4番だったら、気にならなかったのかもしれない。(でもプロなんだから吹き分けてよo(`ω´*)o)

というわけでバランスが好みでなかった。指揮者としてのアシュケナージが好きでないので、批判的に聴いてしまったのかもしれない。アンコールでは珍しい「楽興の時」、弦楽器群のみの小品の演奏だったので、まるで指揮者にお構いなく自分たちでさらっと弾いてしまったように見えて、このオーケストラの長所がいちばん発揮された演奏だったような。

ちなみにコントラバスはみんな4弦で、Cマシンを着けていた。ということは5弦は使わないのかな。フラットバック、ヴァイオリンシェイプの小ぶりの楽器を使っている人が複数いた。これはドイツオケとの大きな違いだろう。

メンデルスゾーンのコンチェルトはロマンティックな楽曲だけにポルタメントがいやらしく耳につき、あざとくなってしまう演奏もありがちと思われるが、この日の諏訪内さんの演奏はとても端麗な作りだったと思う。特に1楽章のカデンツァでは変にもったいぶった溜めや間を設けず、返す刀でぱっ、ぱっ、と斬り返していくような小気味よさもあった。

ドレスは上品なローズピンク。現代曲からバッハまで、表現の引き出しも多い人の、珍しくメジャーなプログラムを聴けて楽しかった。これからも頑張って欲しいなあ。

2008/05/17

歌舞伎座團菊祭

Kabukiza久しぶりの歌舞伎座。五月は恒例の團菊祭、今年は海老蔵が初役で「義経千本桜」の渡海屋銀平(実は新中納言平知盛)を演じるというので、この幕だけ見ようと思って出かける。

休日なのに早起きして一幕見席の販売窓口に1時間前に到着、おかげでいい席に座れた。歌舞伎の一幕見は千円足らずでたっぷり楽しめるのだから、CG頼りの下手なハリウッド映画を見るよりいい娯楽だと思う。

千本桜の「渡海屋」「大物浦」は大好きなお芝居で、吉右衛門、勘九郎(現:勘三郎)、猿之助などで何度か見ている。それら大先輩に比べると、今回の海老蔵演じる知盛は、まだ線が細いかなという気がした。

壇ノ浦の戦いに破れ、二位の尼に抱かれた安徳天皇が入水するのを見届け、「見るべき程の事は見つ」と、自ら二領の鎧を重ね着して、海中に没した(『平家物語 巻十一』)清盛の四男、平知盛。

あの戦いで死んだはずの知盛と、安徳天皇が実は生きていて…という設定でこの芝居は始まっている。仇敵源義経への復讐のチャンスをうかがいながら廻船問屋の主人、銀平と偽名を使って隠れ住み、娘お安こそは安徳天皇…という懐の深さを要求される難しい役どころ。海老蔵くんはきっぷのいい台詞回しはさすがながら、海の荒くれ男たちをとりしきる、義侠心ある大親分、といった器にやや欠ける。吉右衛門や猿之助が演じると、実際以上に体が大きく見えたような気がしたのだけれど。

義経一行がまんまと船に乗って出立したあと、白装束に薙刀で身を固め、正体を顕す平知盛。いまこそ怨念を晴らさんと義経の後を追うが、返り討ちにされ、血みどろの鎧姿で安徳天皇とお守り役の典侍局の姿を探す。帝たちはすでに義経によって救われていたのだった。

出家を促す弁慶の数珠をひきちぎり、なおも義経に襲いかかろうと修羅道の妄執に駆られる知盛。悲壮な場面である。人間の業の深さが観客に強く刻み込まれるほど、幼帝の「永々の介抱はそちが情け、今またまろを助けしは義経が情け、仇に思うな、これ、知盛」という諫めが心にしみる。難しい台詞が続くところを、安徳天皇を演じた子役さん、健気に頑張りました。海老蔵の銀平、知盛は全体的に小さくまとまってしまっていたような印象をうけたが、この場面で、ストンと心のつかえが取れるような爽快感は説得力のある芝居だった。

銀平女房お柳、じつは典侍局を演じた魁春さん。「俊寛」の千鳥のようなうら若いうぶな娘や町方の女房役に秀でているので、お柳は得意分野としても、正体を顕してからの典侍局といった高貴な役どころはどうかな思っていたが、キッと海面をにらみ、帝の御幸なるぞ、守護いたせ、と海の神々に宣言するところなどは声に決然とした張りもあり、よかったと思う。

クライマックスの「碇知盛」。命運を悟った知盛が幼帝を義経に託し、自らは薙刀を杖に岩場によじのぼり、碇の太綱を身に巻き付け、碇を海中に投じ、その重さに引っ張られて海中に後ろ向きに身を投げる幕切れである。ここはややテンポがわるかったのかな?完全に綱が海中に消えてからも芝居が続いて、知盛の体を暗い海中に呑み込もうとする「力」(単に碇の重さという以上の意味を持っているはずだ)の大きさが感じられなかったのが残念。

観客はするすると海中に落ちていき、残り少なくなっていく綱を見ながら、はらはらしながら知盛に残された時間の少なさに共感し、世の無常を感じるのだし、はっと後方に飛び退くように落ちていく知盛の目が見ていたはずの虚空を思い描くのだから。

まあ何はともあれ、久々の観劇に満足。客席に若い人や外国の方も多かったのは嬉しいこと。…余談だが、館内放送で「吉兆」での食事予約の受付が案内されたときには、客席から失笑が漏れていた。問題を起こしたあの店とは関係ないにせよ、人の心に仇なすな、といういい教訓であります

2007/07/11

初ヅカの巻

Ca260488実は初めてなんですが。宝塚を観てきました。

この東京宝塚劇場の前は銀座界隈をうろうろする時に何度も通りすがった場所であり、ファンクラブの人たちが歩道に整然と並んで(前の列の人は後ろのためにちゃんと座るのだ)お目当てのスターの出待ちをしている様子だとかを目の当たりにしていたので、宝塚の派手な衣装やメイクよりも、鉄の規律を守るファンクラブの人々の方に私の関心は向いていて、「上演中に客席で咳き込んじゃったりしたら殺されるな」とか妄想したりして、歌舞伎座で飲んだり食ったりしながらだらだら、に慣れた身にはちょっと敷居が高かった場所である。

Scan10001そんな私がなぜ今更宝塚デビューを果たしたかというと、ミュージカル「エリザベート」について調べているからで、ちょうど今年は本家本元のウイーン版が来日して注目を集めたんだけど、とっくに公演は終わっていたのだった。

…で、宝塚初演となる一路真輝版DVD(高かった…(´_`。))を観たりしているうちに、折しも雪組公演中と知ったので、食わず嫌いも勿体ないのでいっちょ見に行ってみるか、と思ったんである。

が!!宝塚において「ベルサイユのばら」に次ぐヒット作となったこの作品、チケットは完膚なきまでに売り切れていて、ぽっと思い立って観に行けるほど甘くなかった。結局プレミアのついたキャンセルチケットを買って何とか今日にこぎつけた、という次第。 

前置きが長くなったけど、席は2階センター、舞台全体が見渡せる好ポジション。オーケストラピットの中も見えて面白かった(Tbの人が上手かった)。キャストも予想(先入観?!)以上に声に厚みがあってしっかり聴かせる歌唱力があるし、DVDで観た一路真輝のトートはいかにも黄泉の帝王といった冷酷さを前面に押し出そうとしているのに対して、今日の水夏希さんの"閣下"はエリザベートに拒絶されて苦悩する姿に人間味が感じられて、よりリアルな愛憎劇になってたように思われた。

エリザベートがトートの愛を受け入れるくだりは、何か、唐突な感じもするんだけど…本家の脚本もこんな感じなのかな。トートがカッコ良かったから、ま、いいか♪

2007/05/19

ブラ3@武満メモリアル

昨夜は富士通コンサートシリーズ「ハンブルク北ドイツ放送交響楽団」(東京オペラシティーコンサートホール)を聴きに行く。

ブラームスの交響曲3番&1番というプログラムだったが、何といってもすばらしい出来だったのは3番だった。指揮のクリストフ・フォン・ドホナーニは常にオーケストラを抑える指示を出しながら振っていたので、ドイツオケは重厚にごんごん鳴らしてくるもの、と単純に思い込んで聴いていた私にとっては、意外なほど繊細で丁寧な演奏だった。これは何といってもクリーヴランド管を育て上げたドホナーニの力量。あれほどの最弱音で、すーっと溶け合った音が出てくるのにはほとほと感心してしまった。

ブラ3は3楽章のチェロの旋律が映画音楽などに使われ、有名なことを除いては割と地味な存在ではあるけれど、こうして緻密なアンサンブルでじっくり聴いてみると、時々はっと人の心を惹きつける和音がでてきて、2楽章が特に魅力的だ。管はホルン、オーボエが上手かった。クラリネットはもう少しねっとりした音色が好きだけど。もっと後方の席では、さらに溶け合ったアンサンブルを実感できただろうと思う。

今回はBoneheadの「いわ」さんにチケットを手配していただき、下手側の前から12列目という位置で間近に聴く事が出来た。オケが対向配置だったためにコントラバスを目の前で見ることが出来たのも幸運♪4プルト表の人がすっごく入れ込んで弾いていて、このおじさんブラームス好きなんだろうなあ、と思いながら楽しく見ていた。次は4番弾きたい、と思っていたけど、やっぱ3番かなあ。

2007/02/11

ポップなマリー

ソフィア・コッポラ監督作「マリー・アントワネット」を観てきた。フランス革命で断頭台の露と消えるまでの歴史絵巻を期待して劇場に押しかけた我々に、この新進女性監督はさらりと肩すかしを食わせてみせる。もう一度観たい、というほどのものではないが、休日の昼下がりに気楽に楽しめた、まあ、そんな感じの映画だった。

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2007/01/17

日本橋でプラネタリウム!~リベンジ編~

前の記事のあらすじ。

①日本橋に仮設ドームが出現した。②プラネタリウムクリエイター大平貴之氏がてがける「メガスターⅡ」の投影する満天の星空に期待して出かけた。③プログラムは「北斎の宇宙」というものであった。④北斎の浮世絵も、まぁ、好きだけどさ、よけいな芝居に付き合わされて、肝心の星空がほとんど見られなかったじゃないの。⑤何考えてんの宮本亜門(演出担当)。⑥金返せ。

…とまぁこんな具合であるが、さすがに主催者も「これは…」と内心思っていたらしく(かどうかは知んないけど)、帰るときに入場券の半券を提出すればもう一回「北斎の宇宙」または新年から始まるプログラム「星空の贈りもの」を無料で見られる『招待券』をくれるという変なシステムであった。

で、今日は、その口封じの招待券を握りしめ、見てきたさ「星空の贈りもの」。これこそ純然たる「プラネタリウム」だよ。日本の春の夜空→南の島の夏の星空→北国の冬の星座たち→(ないしょ)、という順序で星空を巡るという内容であった。

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2006/12/21

日本橋にかかる天の川

Nihonbashi …それは、500万個の星空を映し出すという。

大平貴之氏が開発した、世界最高峰といわれるプラネタリウム「メガスターⅡ」を、以前から見たいと思っていた。

それが、期間限定で日本橋に登場した。「日本橋 HD DVD プラネタリウム」という仮設の施設で楽しめる。(三越本店そば、三井本館前。)

上映中のものは「北斎の宇宙」というプログラムで、その浮世絵が意外にも幾何学的な構図の秘密を持つという、葛飾北斎の「宇宙」と星空とのコラボレート、といった内容である。

生きる目的を見失った現代の青年のもとに北斎が現れて…というストーリーに沿って展開していくので、この30分のプログラムではメガスターⅡによる満天の星空を楽しむにはちょっと(いや、かなり)物足りないというのが正直な感想ではあるけれども、確かにこれは今までのプラネタリウムとは明らかに別格のリアルさであった。

2007年1月1日からは世界中の四季の星空を巡る「星空の贈りもの」という新プログラムも併催されるそうなので、何としてももう一度、これを見に出かけようと思う。

開催期間:2006年12月15日~2007年6月30日、入場料:1500円(帰るときに半券を提出すればもういちど見られる「招待券」がもらえる)。

毎時間00分から1日に何度も上映されているので、前売り券も販売されているようだが、平日の昼間なら会場窓口にふらっと出かけても十分買える。

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